家具や建材に含まれるホルムアルデヒドとは?人体への影響や対策方法を解説
ホルムアルデヒドと聞くと危険な物質だと耳にしたことがある人も多いでしょう。
しかし、家に使われている建材や家具に使用されている接着剤には、ホルムアルデヒドという揮発性有機化合物が使用されており、微量であれば問題ありませんが、一定濃度を超えると人体に悪影響を及ぼします。
今回は、家具や建材に含まれるホルムアルデヒドが人体に与える影響や対策方法をご紹介します。
ホルムアルデヒドとは
ホルムアルデヒドは刺激臭のある気体で、2つの水素(H)・炭素(C)・酸素(O)といった元素で構成されている物質で、化学式はCH₂Oと表されます。
合成樹脂の原料や接着剤、塗料、界面活性剤、繊維の防縮などとして使われる、揮発性有機化合物の一種です。
ホルムアルデヒドには防腐効果があり、水に溶けやすいという性質を持っているため、水に混ぜられて防腐剤として用いられます。
ホルムアルデヒドは、接着剤として家具や建材、防縮加工として衣類などの日用品に幅広く使用されています。
一方で、濃度1%以上のものは劇物に指定されています。
家具や建材から放散されたホルムアルデヒドによって、室内濃度が100㎍/㎡(0.08ppm)を超えた場合、目や鼻などの粘膜や気管を刺激し、シックハウス症候群を引き起こす原因となります。
ホルムアルデヒドを含む家具・建材
ホルムアルデヒドは、壁紙やフローリングの接着剤として家のあらゆる場所で使用されています。
また、タンスや食器棚など木製家具にも多く使用されています。
合板には接着剤・塗料・防腐剤が使用されており、その中にホルムアルデヒドが含まれています。
そのため、室内の空気中に放散し、存在していることがあります。
現在は法律によってホルムアルデヒドの使用量が制限されていますが、規制される前につくられた古い家や家具はホルムアルデヒドを多く含んでいる可能性があります。
ホルムアルデヒドは10年以上経っても空気中に溶け出すことがある物質のため、古い家に住んでいたり、古い家具を使ったりしている人は注意が必要です。
ホルムアルデヒドが人体に与える影響
ホルムアルデヒドは刺激臭で人を悩ませるだけでなく、人体にさまざまな悪影響を及ぼします。
ホルムアルデヒドがただよう空間で過ごしていると、以下のような症状に悩まされる人が多いようです。
・アトピー性皮膚炎になる
・頭痛がする
・めまいがする
・目がチカチカしたりゴロゴロする
・鼻水・鼻詰まりがする
・せきが出る
・涙が出る
・のどがすぐに乾くようになる など
とくに、家の中で過ごしているとき、これらの症状に悩まされることをシックハウス症候群と呼びます。
ホルムアルデヒドに関する法律
ホルムアルデヒドは一定の基準を越えると人体へ影響を及ぼす危険な物質であるため、法律で規制されています。
家庭用品規制法
繊維製品の防縮・防しわ加工、形態安定加工等を目的にホルムアルデヒドが使用されていることがあります。
これらの目的で使用されたホルムアルデヒドは製品中に残存する可能性があります。
こういったホルムアルデヒドを規制するために「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(家庭用品規制法)」があります。
「家庭用品規制法」では、肌に触れる繊維製品のホルムアルデヒドは75ppm以下までという基準が設定されています。
また、乳幼児(生後24か月以下)が使用する繊維製品には、16ppmという基準が設定されています。
これは、乳幼児の肌が敏感であること、なんでも口に入れてしまう可能性があることが考慮されているためです。
そのため、乳幼児の場合は、先に示した繊維製品に加え、おしめ、おしめカバー、よだれ掛け、帽子、寝具等も規制対象となっています。
このように、乳幼児が使用する繊維製品は国際的にも厳しく規制されています。
建築基準法
2003年7月1日に改正建築基準法が施行され、シックハウスを防止するため、ホルムアルデヒド対策とクロルピリホスの使用禁止が義務付けられました。
ホルムアルデヒドの発散量の少ない建材を使用するとともに、換気により室内の化学物質濃度を低減させる必要があります。
建築物における衛生的環境の確保に関する法律
事務所や店舗などの用途(特定用途)に用いる、延べ面積3,000平方メートル以上の建築物で、それ以外の用途に用いる面積が、特定用途に用いる面積の10%以下の建築物を対象として、室内空気を調査し、規制への適合を図らなければならないものとして、ホルムアルデヒドの濃度基準「1立方メートルにつき0.1㎎(0.08ppm)以下であること」が追加されました。
国際基準と日本のホルムアルデヒド規制の比較
日本と海外のホルムアルデヒドに関する規制を比較すると、各国で異なる基準が設けられています。
米国では、有害物質規制法(Toxic Substances Control Act:TSCA)の下で、複合木材製品からのホルムアルデヒド放出量を段階的に削減し、第三者認証機関による評価を義務付ける「大気中毒性規制措置」が施行されています。
これはカリフォルニア州が先駆けており、米国全体での規制として2016年に確立しました。
一方、カナダでは自主的基準として2016年にカナダ規格協会による基準が設けられましたが、法的な拘束力はありませんでした。
しかし、2021年に「複合木材製品からのホルムアルデヒド排出規則」が公示され、法的な規制が確立されました。
この規制は米国の規制と整合性を持たせる形で設定されています。
日本では、建築基準法などによりホルムアルデヒドの規制が定められており、特にF☆☆☆☆(フォースター)マークが付与された建材は、最も放出量が少ないことを示しています。
これらの規制は居住環境の安全を保障するために設けられており、日本の住宅メーカーや建材メーカーはこれらの規制に従い、低ホルムアルデヒドの製品を提供しています。
海外製の輸入家具を家に置くリスク
海外製の輸入家具には、ホルムアルデヒドなどの化学物質を含んでいる場合があります。
これらの家具から放出されるホルムアルデヒドは、室内の空気質を低下させ、シックハウス症候群の原因となることがあります。
日本国内の基準は厳格であるものの、全ての国が同等の規制を設けているわけではないため、輸入家具には注意が必要です。
選ぶ際には、製品の安全基準を確認し、信頼できるメーカーや供給元から購入することが重要です。
ホルムアルデヒドによるシックハウス症候群対策
ホルムアルデヒド濃度を下げる対策として、確実に濃度を下げるには、計画的な換気が効果的です。
まずは現場状況の把握が必要です。
測定器で室内のホルムアルデヒド濃度を測定し、1立方メートルにつき0.1㎎(0.08ppm)以下かどうか確認します。
室内にホルムアルデヒドが1立方メートルにつき0.1㎎(0.08ppm)以上存在していた場合、ホルムアルデヒドが充満しない様に換気扇や、空調設備を設置しましょう。
その後も定期的に測定を実施し、ホルムアルデヒドの濃度が減少しない場合、発生源の特定や対策が必要です。
換気
シックハウス症候群対策として基本となるのが、十分な換気です。
窓を定期的に開けて外気を取り入れることで、室内のホルムアルデヒド濃度を下げることができます。
新築やリフォーム後の建物では、特に意識して換気を行う必要があります。
ベイクアウト
ベイクアウトとは、室温を上げてファンなどで空気を循環させることで、建材からのホルムアルデヒドの放出を促進し、その後に換気を行うことで室内の濃度を下げる手法です。
空気清浄機の利用
空気清浄機の利用も有効な手段です。
特にホルムアルデヒドを分解する機能を持つものを選ぶと、室内の空気をきれいに保つのに役立ちます。
マスクの着用
マスクの着用は、ホルムアルデヒドなどの有害物質を吸入するリスクを減らすための一時的ながら即効性のある対策です。
活性炭の設置
活性炭の設置も効果的です。
活性炭には有害物質を吸着する性質があり、室内に置くことで空気を浄化することができます。
オゾン脱臭
オゾン脱臭機を使用すると、ホルムアルデヒドだけでなく、さまざまな臭いのもとを分解してくれるので、臭いに悩まされているという人には有効な方法です。
家具・建材の買い替え
ホルムアルデヒドを放出する原因である家具や建材の買い替えを検討することも一つの方法です。
しかし、買い替えにはコストがかかるため、状況を考慮した上での判断が求められます。
引っ越し
最終的な対策として引っ越しを考慮することもあります。
特にシックハウス症候群の症状が重い場合や、上記の対策を行っても改善が見られない場合には、環境を根本から変える必要があるかもしれません。
まとめ
シックハウス症候群の原因はホルムアルデヒドのような化学物質だけではなく、カビやホコリ、ハウスダストなどもあります。
そのため、家に置く家具はできるだけ国産のものや基準以下と認証されているものにすることが重要になります。
しかし、家具をよくしても室内中の空気が循環せず留まるような家ではシックハウス症候群が発症するリスクも高いため、しっかり換気をしたりと定期的なメンテナンスが必要です。
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